2017シアスポの意義

以下は演劇大学連盟「シアタースポーツ」のパンフレットに掲載したものです。

 

2017年に芸術劇場で「即興演劇」が上演されることには大きな意味がある。ググれば1秒で世界中の情報が得られる時代。しかしそれは「誰か」の情報でしかない。血肉ある「我ら」の情報は、人々がひとつに集まり、分かち合うことでしか得ることはできない。その場が劇場である。

 ここで披露されるのは、人間にしかできないことだ(どう考えてもロボットにはできそうにない)。「指示」されるのではなく、自ら考え判断し表現する。仲間を助ける。湧き上がる衝動に従う。遊び心を持ち続ける。若者たちに即興演劇をする場を提供することは、将来への投資でもある。

 「シアタースポーツ」は、元ロイヤルコート劇場の演出家キース・ジョンストンによって考案され、世界中で上演されている。しかし日本ではまだ知られていない。日本では、台本があり演出家に指示されないと怖くて舞台に立てないという俳優が沢山いるし、そういう演劇でないと興行として成り立たないと考えられている。しかしそうだろうか。台本も演出ないスポーツのほうが多くの観客を動員しているのはなぜだろう(多ければいいということでもないが)。最後に「シアタースポーツ」を演目として認めてくださった演劇大学連盟と芸術劇場、私と一緒に冒険してくれた学生たち、ご来場くださったお客さまに深く感謝をします。